鈴木ドミノ

コーダ あいのうたの鈴木ドミノのネタバレレビュー・内容・結末

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

今回観ていて特に良かった部分が2つあります。

一つは、主人公ルビーの置かれた環境の特殊性ではなく、普遍性にフォーカスして魅せていたところです。

物語の序盤は聴覚障害を持つ家族の生活をユニークなタッチで描写していましたが、中盤からは、主人公が家族の一員として生きていくか、個人の人生を生きていくかという二項対立に収斂していきます。

これは誰しもが抱きうる葛藤であり、中途半端に「障害」をテーマにした物語ではないという点で、作り手の真摯な姿勢が伺えます。

二つ目は、「そもそも人はどのように音楽を聴いているのか?」という根源的な問いです。

物語後半で畳み掛けるように提示される、「共通体験」「振動」「ジェスチャー(手話)」という三要素は、健聴者である我々が意識を向けない(がゆえに重要な)音楽聴取の多角性であり、やや拡大解釈かもしれませんが、そもそも健聴者は音楽を意識して聴けているのか?というラディカルな問題提起に繋がります。

健康な肉体を持つが故の不自由さという問題は間違いなくあり、音楽を聴くことの複雑性を提示しているという点で、かなりレベルの高い「音楽映画」になっていると思いました。
鈴木ドミノ

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