ヴぇる

コーダ あいのうたのヴぇるのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
3.6
聴力に問題を抱える家族を描いた1作だ。

今作は作品賞と脚色賞、父親役のトロイコッツァーがノミネートされている。加えて配給がGAGAで相変わらずの素晴らしい予告編だ。しかし予告編の出来が良すぎるためその期待感を上回れるない事がたびたびあるが今作はギリギリそのハードルを超えてきたと言える。

聴覚障害という題材は既に使い古されているが、近年は減少傾向にあったので逆に新鮮味があり、時代の移り変わりともにこの様な作品は受け入れられるべきであろう。その点がオスカーで評価されているとも言える。

ただ内容はそこまでドラマチックな作りではなく、ティーンエイジの主人公が家族と外の世界との板挟みの中でどう生きていくのかという葛藤を主題にしているので心を揺さぶられる程の感動があったか?と言われれば疑問だ。
加えて音楽もイける程ずば抜けた訳でもなくアレンジも特にないため、そこに期待はしない方が良い。

故に引き込まれる理由は演技力になるであろう。言葉を使えない演技には相当の力が必要であり、シーンによっては鬼気迫るものがあった。
また演出に関して1点素晴らしかったのは1分弱の静寂だ。映画館で呼吸をすることすら躊躇われるほどの空間はここまでの過程があったからこそ効果的で美しさすら感じた。
ラストに関してはあっさりしすぎているという指摘もあるが落とし所としてはこんなものだろう。少し物足りない気もするが、これ以上はくどくなると思うので締め方としてはまずまずだと思う。

総評としては、全体的に悪くない出来で優しく暖かい勧めやすい映画であるといえる。だが、同時に丸く収まりすぎているそんな印象だ。確かに涙が流れるシーンや素晴らしい演出はあるので、高評価とまではいかないが、平均以上というそんな映画だろう。
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