ろう者とコーダのかなり現実に近いものを表現できていたのではないかと思う。インタビューによると監督が手話を学んでいるそうで、映画からもろう者の文化をとても丁寧に理解しようとしていることが伝わった。物語としても無理に詰め込むのではなく、シンプルで王道なストーリーを細かなろう者とコーダの世界のリアルで描いていて、分かりやすくて良かった。
少し深みがないような物足りないような気持ちもあるのだが、その方がいいように思う。ろう者やコーダの全てを描ききることはできず、健常者の価値観で変にかわいそうに仕立てたり妙に感動的な話になるより、この世界の一部を覗き見るくらいのこの映画は、わきまえた礼儀正しい作品に感じた。