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コーダ あいのうたのtakuのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.3
主人公のルビーは家族が全員ろう者のCODA。

「歌っている時はどんな気持ち?」と聞かれて表現に困って手話で伝えようとしたりしていて、恐らく手話と音声言語(英語)がネイティブのバイリンガルなのだろう。

このように家族の中でルビーのみが手話等を媒体とするいわゆる「ろう文化」と音声言語の文化、二つの文化空間の中で育っているというのはこの映画の重要な点であると思う。

この作品のようにCODAが通訳として家族の日常生活を助けるというのは良くあることらしい。幼い頃から家族を助けて生きる、CODA特有の家族のあり方が作中で描かれている。

お母さんが「娘がきこえると分かった時落ち込んだ」と言っていたが、それは自分とは異なる文化で育つであろう娘と分かりあえるかどうかという不安からだった。

そしてその不安は現実のものとなる。ルビーはろう文化の外側、「歌」に人生を捧げていくことになる。ルビーがきこえさえしなければ、彼女は一生、家族と同じ価値観を共有し、一緒に暮らしたかもしれない。
でも彼女はきこえる。だから、一生一緒にはいられないのだ。

家族を置いて自分の育った文化を離れようとするルビーの葛藤と勇気。そして自分たちの文化の外へ行こうとする娘(妹)の選択を理解し、応援しようとする家族の努力。
自分の歌を家族に伝えようとするルビーの姿は本当に美しい。

これはただの家族愛とかではない。異なる文化同士の相互理解、想像以上に深くて偉大な愛の物語だ。
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