油性

コットンテールの油性のネタバレレビュー・内容・結末

コットンテール(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

たぶん自分は兼三郎寄りの人間なんだよな。
「自分が助けるから」「なんとかなる」「なんとかする」って約束したから、それに対して極めて実直に応えるし、そうすることが正解であると信じて疑わない。明子の尊厳を守るためには、トシにはみせたくない姿もあると思うし、そういう恐れも含めてあらゆるものから守るって考えてるんだと思う。(実際のところ、明子にしてみればそんなことは望んでなかったかもしれないが。)
お風呂場で明子を洗ってトシを迎え入れたい兼三郎と、痛みに耐えかねる様子を見かねたというのもあるが自分も兼三郎と同じ側で母を支えたいというトシの行き違い。(この迫真のシーン、まだまざまざと思い出せる。)
トシは、お父さんの世界に僕を入れてほしかったって言われるけど、入れてないつもりなんてさらさらないんだよ。だから、そんなふうに言われて虚を衝かれたように感じたんじゃないかな。自分のペースがあるとそのペースに組み込めないものは除いて考える、大したことじゃないから、みたいな。でもトシにとってそれは大きいことで"世界"なんだと思ったら、親子という関係性をまざまざと感じたな。兼三郎が大したことじゃないと感じるのは自分でどうにかできる、と思うからであり、実際今までそうやってきたからなのだけど。でも家族ってたぶんそうあるものではないんだろうなと思う。
…と思うとまだ自分は家族を設けるのは厳しいわ、自分でなんでもやろうと言うのは他人を許せてないことだと思うので、、でもなんか兼三郎と明子みてたら結婚っていいなって思った。人生で初めて思ったよ。

・ーウィンデミア湖でコットンテールを追いかけた、あのときの肌着の父 ーを懐古し、あれが家族の幸福だったと話す明子。そのときの兼三郎がウサギの真似をしたことを思い出して、家族を重ねたのだろうと思う。プロモーションの動画見たけど、リストの愛の夢第三番なのいいね。それこそコットンテールだったんだものね。
でもラストシーンにうさぎが現れるまではやらなくても良くない?と思った。あんないいタイミングででてくるわけないし、別にうさぎが現れなくてもそれはそれでいいのでは…ってちょっと白けた。サツキ結構兼三郎へあたり強かったのに急にはいってくるなーとも思うし。

・トシ(錦戸亮)がネクタイしめて渡してあげるシーン、好きすぎる。
・チャリでウィンダミア湖目指して助けを求めた相手、大正解。てか総じてキャストが絶妙で良い。
・他に好きなシーンは孫にアイス買ってあげて自分はお酒飲んでるとき。孫に対しては心を開くとか云々ではなく可愛がっている素直さを兼三郎から感じられるから。きっとトシがうまれたときもはじめはこうやって触れ合っていたことを想起させるし。
そのあと1人で先走っちゃって冒険(チャリのライトで雨の中の一晩を明かすとか)助けられて色々考えを進めて、もらった連絡先に電話して、2人と別れて「家族」のもとに戻るとこまで、好きなシーンが続いてた。

・初めて寿司屋で会ったときも、病院の近くの喫茶店に行ったときも明子の開襟シャツが印象的だった。

・魚屋でタコをくすねたシーン、はじめはハテ?と思ったけど、病室で兼三郎が明子の手を握り明子が涙を浮かべてみつめてきたあと、看護師がなだれ込むように入ってきているのに一点を見つめる兼三郎で、もしかして。と思う

・「助けてやれなかった」
リリーフランキーから漂う悲哀。
油性

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