このレビューはネタバレを含みます
困る。俺はヒーロー映画を観に来たつもりだったのだが、これはヒーロー映画ではなく「ヒーローとは何か」映画だったようだ。
シン・ゴジラ以降の庵野秀明オールスターみたいなキャスト陣はすげー良かったし怪人デザインも超クール。クモオーグの活躍はもっと欲しかったしサソリオーグが長澤まさみってマジ? 血も容赦なくブシャーと出るのでなかなかハード。
ショッカーの悪事に現実味がなく、登場人物もことごとく人間味が薄いため、めちゃくちゃドラマやアクションに共感しにくい。いわゆる世界の危機の演出も逃げ惑う一般人もないため、仮面ライダーが一体何と戦っているのか?という動機の部分が欠落しているように思える。だが、恐らくそこが本題ではないのだろう。「ヒーローとは何か」「ヒーローとはどうあるべきか」「ヒーローは何と戦うのか」……この映画で語られるのは、オリジナルの仮面ライダーを観て育った人間が、ヒーローに対する熱い想いをありったけブチ込んだパッションであり、精神である。シン・ゴジラみたいに時事を組み込んだ巧みさもシン・ウルトラマンのような原典の翻訳もなく、オタクの、オタクによる、オタクのための映画のような何かだ。
だからストーリーが破綻していようともルリ子のキャラが掴みきれなくとも暗闇でショッカーライダー10人もが襲いかかってきて「見分けつくわけねえだろ!」となっても、ラストで一文字隼人が本郷猛の意思を継ぎマフラーを巻き直すシーンがあれば100点満点なのだ。そもそも一文字隼人という人間が唯一この映画で”生きている”と実感できたのも作為的なものだったのかもしれない。
……とまあ、真面目くさって話すこともできるのだがやっぱこの映画はおかしいよ、マジで。シン・ゴジラやシン・ウルトラマンはまだ理性保ってたわ。怒られてもしかなね〜ぜこんな映画はよォ〜〜〜!!