ユーライ

シン・仮面ライダーのユーライのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
2.5
『シン・ウルトラマン』の欠点を改善することなくそのまま受け継いでいて愕然とさせられる。もちろん、『シン・ゴジラ』の時から庵野秀明の悪癖は見え隠れしていたのだが、樋口真嗣とのタッグが功を奏したのか、震災というモチーフに取り組んだからなのか、単に思い入れに乏しいからか、理由は様々あるにしても、概ね裏返った美点として機能していた。しかし愛着全開のウルトラライダーになるともういけない。原典を尊重した、アナログ特撮を継承するといったお題目を建前にして、悪しきノスタルジーを垂れ流しにするだけの20世紀博に成り下がった。ゴジラは、どうせ巨神兵みたいにミニチュア懐古丸出しになるんだろという予断を白組謹製のフルCGで覆したではないか。オタクだけに向けた閉じた映画にしない志があったじゃないか。それが何だ、今更のようにスーツの線が見え見えになったチープさへの偏愛を隠そうともしていない。後退してる。ごっこ遊びを本物に見立てることを観客に強要してくる。こんな甘え切った態度よりは、志はあるが結果的に出来ていない『THE FIRST』の方がまだ擁護のしがいがある。「人間の善性を信じる」とか言いながら、市井が一切排除された箱庭セカイでいくら問答をしても空虚なだけなんだ。本郷猛がルリ子さん一筋なのはそりゃー大変結構なことなんだけど、本当に守るべきはあのセーフハウスを建てた建築現場の名も無いオッサン達だろ。怪しげな髭の男達から頼まれて汗水垂らして働いてる訳ですよ。給料が安い長時間労働だとか愚痴りながら。そういうネームドではない一般人ABCDEFGへの視点が徹底的に欠けている。ヒーローが知り合いだけ選り好みするのは良くない。実際は違うとしても描写を欠いているせいでそうとしか思えない。女性の描き方も相変わらず気持ちが悪く、「ニケツして女の子から手を回されたらドキドキですよね!」みたいな価値観。そういうのはお得意のアニメーションでやってくれませんか。浜辺美波は綺麗に撮れてるよ、でもその後ろにある情欲が信用ならないってんだよ!『シン』シリーズはACU(アンノ・シネマティック・ユニバース)もとい「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」として続いていくんでしょう。だが、庵野秀明のお気持ちを忖度するファン感謝祭には全く期待出来ず、参加したくもない。降りていいですか?
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