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シン・仮面ライダーのgatoのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
4.5
シン仮面ライダー、めちゃくちゃ面白かった!!
庵野秀明の作品の中で一番好きかもしれない。

仮面ライダーの知識はほぼゼロだったが、十分に楽しめた。

ヒーローという名の崇高な異常者の姿が、とてもうまく表現されていたと思う。

肉体が滅びてもその遺志が受け継がれていくというストーリーも良かった。

カメラワークに迫力があって良かった。あと思ったよりスプラッタだった。

あえてチープに作られた画面や、無駄に英語の発音が良い所がツボにはまった。

基本的に全員が感情を抑えた棒読みに近い演技をしているのだが、登場キャラがほぼ全て改造人間なのでむしろ人外っぽくて雰囲気に合ってたと思う。

ショッカーが非常に魅力的な悪の軍団として描かれていたのも良かった。
AIが社会に絶望した社会不適合者に対して力を与え、それぞれが自身の幸福を追求するために力を奮っているという設定。
ビジュアル的にも、思想的にも、多種多様な異常者が登場してとても面白かった。

戦闘シーンにも力が入っていたが、あえて特撮の泥臭さを残してある感じがして面白かった。恐らく庵野監督のこだわりなのだろう。
ハリウッドのスタイリッシュな戦闘シーンとは全然違うジタバタ感とかモサっと感が、かえって登場人物の必死さを感じさせるようで、個人的には良かった。

ヒロインのビジュアルや雰囲気はエヴァンゲリオンの綾波レイを思い出させた。とても美人で可愛い女優さんで、個人的にすごく好みだった。
主人公もすごく役に合ってたと思う。ぱっと見、昭和から来たような暑苦しくてむさ苦しい外見なのだが、洗練とはかけ離れた彼だからこそ、メッセージがダイレクトに伝わった。

シン仮面ライダーには、庵野秀明の思い描くヒーロー像がこれでもかと詰めこまれていた。
自分の家族よりも、自分の命よりも、他人を気にかける崇高な異常者。
恋人や夫や家族としては間違いなく失格。恐らく、人並みの幸せとは一生縁が無いであろう孤高の存在。
それが庵野秀明のヒーロー像なのだろうと思った。

誰もが一瞬だけヒーローになる事はできると思うし、それは間違いなく尊い事だが、常にヒーローであり続ける人間は異常者以外の何者でもない。

そんな素晴らしき異常者の物語が、このシン仮面ライダーなのだろうと思う。
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