そうまつい

東京自転車節のそうまついのネタバレレビュー・内容・結末

東京自転車節(2021年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

映画祭の招待作品として鑑賞。

青春映画にしては主人公の成長や葛藤が薄く、ドキュメンタリーにしてはメッセージ性が薄い。作品そのものが青柳監督の人間性を象徴しているかのように、行き当たりばったりかつ、「コロナ禍に映像回しまくってれば何か面白いものが作れるんじゃないか」という企画背景が見えそうな程、大味な作品だと感じました。

<良かった点>
・コロナ禍で職(といってもアルバイトだし、その職先は叔父の会社の運転代行)をなくし、地元で就職難に。単身、自転車で8,000円握りしめて東京へ行き、仕事を探すというスタートが描かれていたこと

・自分を取り巻く友人たちの、コロナ禍での動きが見やすかった。(泊めてくれたコロナが怖くて引きこもる大学時代の友人、リモートワークをしながら色々提案をしてくれる高校時代の友人、結婚して仕事をしている高校の女の先輩など)

・デリヘルを呼んだが指名料等がプラスされていて、ぼったくられた様子が描かれたこと

・ラストへ向かって、目標を見出して無我夢中に走り出した点

気になった部分を上げ始めれば枚挙にいとまがありませんが、「自転車」「コロナ禍」「ドキュメンタリー」という要素があれば、もっと面白い作品は作れたのではないかと思いました。

山梨から東京まで自転車でやって来られる精神力と体力がありながら、都内の新宿周辺を行き来するUberEatsすらサボってしまうところとか、イヤフォンが気付けばAir podsになってたりAPAで豪遊したりと、金を散財してしまうところは、原動力になっていた「奨学金を返済するための出稼ぎ」と真逆を行きすぎてて感情移入が削がれました。

そもそも、27にもなって実家でダラダラフリーターして暮らしてたような人間がコロナ禍ってだけで社会に噛み付き、行き当たりばったりで生活してても、そりゃこうなるよなぁって思いながら観ていて、そのまま特に青柳青年が成長していく様子も少ないまま終わった感が否めませんでした。

「電波少年」と「ノンフィクション」を合わせたような作品構成を感じましたが、それも中途半端。序盤はモキュメンタリーとドキュメンタリーの要素がどちらもあるのが惑わされて感情移入し辛かったです。
「水曜どうでしょう」の要素も入れて、いっそ第三者のカメラマンが青柳監督に無理難題を吹っ掛けてくるとか、逆に青柳監督はカメラ回すだけに徹してこの作品を作るようにまわりを巻き込んでいくとか、何かしら作品としてのルールを作ってほしかったです。
そして、93分は長すぎます。どう考えても不要なカットが多すぎる。説明して欲しい箇所は足らず、説明しすぎている箇所は多すぎる。

何より、この作品の9割を占める青柳青年を好きになるかどうかが作品の肝なのですが、僕は青柳青年よりも借金を抱えていても笑って生きてるし、池袋-熱海を往復したことあるからもっと道中に色んな出会いや発見があることも知っているので、もうちょいどうになっただろうとも思いました。
怠惰な部分は普通に引いたし、四の五の言わないで映像つくれる力を発揮できる仕事に就け、と思った時点で僕はこの作品を好きになることができなかったです。

普通に就職しろよ。映像業界、山ほど仕事あるだろ。
そうまつい

そうまつい