「回転」（1961）のジャック・クレイトン監督によるダークな子供ヒューマンドラマ。パメラ・フランクリンやマーク・レスターなど有名子役たちが７人兄弟姉妹を演じた、日本では知られていない傑作。原作は同題英小説（1963）。

イギリス郊外の古い家。病気で寝たきりのシングルマザーの元、７人の兄弟姉妹が住んでいた。母親は原理主義的な宗教に熱心で治療を拒否し、ある日突然死してしまう。子供たちは孤児院送りになることを恐れ母親を密かに庭に埋葬、死を隠して日常生活を送り始める。庭の小屋には母の鏡を据えて祠とし、定期的に降霊会を開いた。半年後、家に教師が訪ねてきて母の死がバレそうになるが、家出していた父親（ダーク・ボガード）が帰ってきて事なきを得る。しかし父親との新生活は子供たちの運命を大きく変えていく。。。

凄く面白かった。子供たちの日常が母の死によってたちまち不穏に陥っていく描写に引き込まれた。反面、子供たちだけで自立を始める様子は楽しそうに描かれるのが好バランスでリアル。

子供たちはみな素直だが、そのぶん母親の影響を受けた宗教二世の性質を抱え、降霊会では15歳の長女ダイアナが母親の憑依を受ける。近所のお兄さんから自転車で送ってもらった三女ガーティが降霊会で「娼婦」と罵られ断髪される場面に心の闇が見て取れる。

クレイトン監督は「回転」でも“子供”の浮き沈みの描き方が絶妙だった。本作の子役たちも見事に演出に応えていて、特に三姉妹はそれぞれのキャラが立ち惹きつける魅力を放っていた。

「サウンド・オブ・ミュージック」（1965）も母親を亡くした７人兄弟姉妹が登場した。同作では家庭教師マリアによって怖かった父親が善き心を取り戻す。そかし本作にマリアは存在せず、優しそうに見えた父親はやがてアル中の悪しき本性を現していく。

ラスト前、庭に置かれた母親の鏡に家のフルショットが写るカットが秀逸。題名の回収と共に、これから起こる悲劇を予感させる実に凄い表現だと思う。

予想していなかったショッキングなラストは余韻を残す。毒親に対する教訓だけではなく、家という繭からの子供たちの解放を感じさせるもの。しかし飛翔するにはあまりにも代償は重い。

ジュブナイルな側面もあるが非ファンタジーでヘビーな一本。個人的には非常に好みな偏愛映画となった。


※７兄弟姉妹を演じた有名子役
長女：パメラ・フランクリン（当時16歳）
次女：マーガレット・ルクレール（当時13歳）
三女：フィービー・ニコルズ（当時10歳）※後に「エレファントマン」（1980）の母親役
三男：マーク・レスター（当時9歳）

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