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ベネデッタのdendohのネタバレレビュー・内容・結末

ベネデッタ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

イタリアのペシアに実在したベネデッタ・カルリーニが主役。製作年が2020年との事から、構想含めると2019年以前からスタートしていると思うのだが、そうなると現代コロナ禍において、図らずしも過去の感染症の時代を描いたという事になる。

R18なのはエロとグロどちらか?と思いきや、どっちもほどほど。どちらかといえばエロ寄り。あからさまなグロは妄想シーン以外には無いが、暴力的な描写は全編に渡って存在。

『レズビアンの修道女が迫害される』という大筋は事前に把握していたものの、前半は神がかったベネデッタが権力を握る経緯をひたすら描く。この段階ではベネデッタに対して全く良い印象を抱けない(ラストの描写を見るに、民衆受けは良かったのだろうが、それにせよ)

冒頭で強奪した金品を返してくれる盗賊団が登場するが、それとは対比的に、カトリック教会はひたすら金にがめつい。中盤には性欲も食欲も旺盛な教皇閣下が登場。やはりカトリックは腐っている。滅ぶべし。
→なお舞台は17世紀との事で、時代的にもやはり宗教改革末期ぐらいっぽい。

キリストはベネデッタの妄想?の中で、ある種のアイドル的存在として描かれる。この頃のベネデッタは教会に対する幻想を抱いていたのか。キリストの局部には男性器がない。男性に対して性愛を抱かないベネデッタにとって都合のよくキリストが描写される。

キリストが強盗の顔で描かれ、ついにはバルトロメイと肉体関係を持つ際、母親から与えられたマリア像を道具に使ってしまう。この時点で彼女のカトリック教会に対する忠誠心か失われていたのか?
しかし信仰を完全には失わなかったベネデッタ、最後にはエロスではなくアガペーを選んで街に戻った...ということなのか。しかしベネデッタが『どうやって稼ぐ?』と言った問いかけもしていた。本当はバルトロメイを選びたかったが、時代がそれを許さなかったのか。

そう言えば前時代においては、女性には性欲がないと(男性社会から)思われていたという話を思い出した。性欲は男性性によるものである為、男性同士のセックスは有り得るが、男性が介在しない女性同士の性交渉はありえないという事か。

■連想した作品
・少女革命ウテナ
特に劇場版は、主役二人をレズビアンとして描いている。体制からの脱却という点で共通項を感じた。ウテナはアンシーを選ぶことが出来た。
バルトロメイは家父長制の権化たる家族からは逃れることができたが、ベネデッタはバルトロメイを選ぶ事が出来なかった

・A Plague Taleシリーズ
ゲーム作品。黒死病の時代、ネズミの大群と異端審問官から逃れる姉弟を描く。
こちらは半分ファンタジー的な内容ではあるが、時代が完全に一致している。暴力的で暗い雰囲気も共通。
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