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ベネデッタのcyphのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
4.2
友だちに薦めてもらって初ヴァーホーヴェンだったけどめーーっちゃ面白かった!実在の修道女のドラマでこんな、マッドマックスとかマーヴェリックとかみたいな興奮を錬成させられるの天才 クローズアップもある種そうだけど、狙いも思想もなく自己目的化しちゃった大嘘つき(仮)が付与の秩序体系に無用な混乱をもたらすやつって絶対に面白くてだいすき…しかも本作は教会という徹底した男社会にひとりの田舎生まれの女がホンモノの信仰心(と演技力)だけで中指突き刺していくっていう血湧き肉躍るフェミニズム映画でありつつ、ホンモノのヤバい女の狂言じみた「お告げ」からいかに利益を掠めていくかっていうホモソおじさんたちの政治ゲームドラマでもある そんなの面白くないわけないじゃん…

ヴァーホーヴェン作品このあといくつか観ていったけどベースとして現行の社会が男による男のための男の社会になってるのはたまたまそうなってるだけで、むしろそうした「自身の名が主格として歴史に刻まれることはない」ことを前提に生まれてくる女がアンコントローラブルな狂気のパワーだけでそこに爪痕を残していく盲目的な奇跡にこそ人間の最も強い煌めきが見られるって信念がバチバチに貫かれてて観ててほんとうに気持ちいい とはいえたとえば本作のベネデッタに対して敬意を表してるのはその本気度だけで、イエスとの淫夢が妙にチープで中学生の書く夢小説みたいだったりっていう徹底的な美化しなさも逆にほんとうに素の「女」がすきなんだね〜と好感が持てる

デネデッタが運命的に出会う下女バルトロメアと性に溺れていくのも、彼女の中でキリスト教への信仰心とその行為が一切矛盾なくむしろお互いを高め合うものとして結びつくのもめっちゃわかる 信仰心を突き詰める過程で「原始」的な「歓び」を発見しちゃったらそらピーンときちゃうよね 当時女の性欲がないものにされてきたという前提のもとに、女の性欲に直接語りかけて説得力を持たすストーリーテリング技巧がよすぎて興奮してしまう 木型のマリア像ってアイテムもいい

R18指定にすこしびびっていたけど血や裸や排泄音が隠されないってだけで鮮やかごりごり娯楽映画だった むしろ過剰なまでに大衆映画としてのおもろさを追求してて、インテリぽさとか悪趣味と言われたくなさとかを一切気にせずつくられた映画なことがひしひし伝わる アンバランスさのバランスが最後までよかった
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