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ベネデッタのbennoのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.9
近代のレズビアン史に名を残す…

  修道女『ベネデッタ』

ポール・ヴァーホーヴェン監督80代半ばにしての意欲作…そして大好きホラー顔が魅力的なダフネ・パタキア目当てです…。

今作は17世紀、同性愛者として宗教裁判にかけられた実在の修道女『ベネデッタ・カルリーニ』の数奇な人生を実際の裁判記録を基に描いています…。



イタリアの町ぺシア…幼い頃から聖母マリアと対話する少女ベネデッタは6歳でテアティノ修道院に出家…。

18年の歳月が経ち…ベネデッタも美しく成長…そんな中、父親の虐待から逃れて来たバルトロメア(ダフネ・パタキア)を助け、ふたりは秘密の関係に…。

同時期にベネデッタは聖痕を受け、キリストの花嫁として見做され、新しい修道院長に就任…周囲に波紋が広がります…その上、町はペストの流行で更なる混乱に…。


果たして、ベネデッタが手にした権力は奇蹟が齎したものなのか…将又、作為的なものなのか…??




元修道院長のC.ランプリングの凛とした演技は流石…思わぬ悲劇に見舞われた際の彼女の慟哭、圧巻です…そして体当たり演技のダフネちゃん…いつもながらのホラー顔が可愛い…。

また、腐り切った教会や修道院の世界も露呈…キリストの花嫁の持参金交渉…権力とセックス…欺瞞と偽善…最も崇高だと思われている聖職者たちの歪んだ欲望…そして耐え難い暴力や拷問…実は、教皇大使も元修道院長も神など信じていない俗物そのもの…観るも悍ましい…。


ただ兎に角、残念!! …ヴァーホーヴェンと言えば…エロス…カメラワークも素晴らしく突き放した引きの映像や人物の感情を突きつける寄りの映像…情動をとても上手くコントロールして見応えあるのですが…暈しで一気に引いてしまいます…映像が素敵なだけに勿体無い…。


ベネデッタという人物は神秘家であり狂言師…両義性を持つ女性…真の姿は誰にも分かりませんが…彼女は明らかに人々を魅了するカリスマ性のある存在…ラストも感興を覚える大胆さで良き…。



                 
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