ShinMakita

復讐者たちのShinMakitaのレビュー・感想・評価

復讐者たち(2020年製作の映画)
2.2

1945年、終戦直後のドイツ。収容所の虐殺を生き延び帰ってきたユダヤ人マックスは、既に元の住居も通ったシナゴーグも消滅してしまったことを知り途方にくれる。離ればなれになった妻子の消息も不明なままだ。そんな時、タルビジオにユダヤ人難民キャンプがあると聞き、移動を開始。途中、英国陸軍〈ユダヤ人旅団〉に食料を分けてもらったマックスは、そのチームリーダー・ミハイルにキャンプまで案内してもらった。ベッドとテントが用意され、パレスチナへの船旅の準備も整えてもらったマックスだったが、キャンプにいた女性から妻子の悲惨な最期を聞き及び、生きる希望を失ってしまう。そんなマックスを見かねたミハイルは、ユダヤ人旅団の「裏の仕事」を彼に見せてやることにする。それは逃亡潜伏するナチ高官を見つけだし処刑する任務だった。ミハイルはパレスチナのユダヤ政府公認軍事組織〈ハガナー〉の一員だった。復讐の念を抱えるマックスは、ミハイルに協力しハガナー入りを果たすことになる。そして、ニュルンベルクで活動する非公認ユダヤ人組織〈ナカム〉に潜入するよう命じられた。ナカムは、首領アッバの指令のもと、ナチだけでなくドイツ国民全てを敵とみなし殺害する過激なグループだった。ナカムの暴走を止めてイスラエル建国の逆風にならないようにするのがハガナーの目的だ。マックスは、ニュルンベルクの浄水場再建現場に潜りこんだナカムたちに合流、その恐るべきテロ計画を聞き出した。彼らはベルリンを含む主要都市で大量殺戮を計画しており、ここニュルンベルクでは水道に毒を投入するつもりらしい…戦慄するマックスだったが、次第に「任務」を忘れ、ナカムの思想に染まっていってしまう…


「復讐者たち」

以下、目には目を。600万には600万を。ネタバレにはネタバレを。

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今年はやたらホロコーストものが公開されます。小林賢太郎はどう思うのか…

本作もそのひとつですが、舞台は戦後で、スパイサスペンスの色が濃いのでちょっと異色かな。町全体に通う水道に毒を投入してドイツ国民大量殺戮を目論む〈A計画〉の話。本当にあった計画で、首謀者アッバも実在しています。


ユダヤ人のナチ狩りを題材にした作品は山ほどありますが、ユダヤ人組織が、同じユダヤ人組織と対立する話は珍しいですね。テーマとしては、「復讐の行き着く先」というやつで、スピルバーグの「ミュンヘン」に近いものがあります。ニーチェの〈深淵を覗きこむとき…〉という名言を想起させるように、アブラハムがマックスに託した「死神袋」が効果的に機能していました。爽快感は全くないけど、エンタメとして純粋に楽しめた一本。ミハイルが語る「真の復讐」に人間の強さ・逞しさが感じられたな。2度と繰り返してはならない。悲劇は悲劇しか生まないんだから。戦争のイメージは湧かなくても、理不尽に家族の命が奪われるってことは池袋の暴走を例に挙げなくても、容易に想像できるよね。この映画が伝えたいことは、実は結構身近なことなのかもしれない。
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