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ムーンライト・シャドウのやのネタバレレビュー・内容・結末

ムーンライト・シャドウ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

吉本ばななさんの作品がとても好きで、なんだけどムーンライト・シャドウは読んだのがかなり前だったため薄ぼんやりとした記憶しかない という状態で鑑賞しました。(そのため、原作者ファンだけどほぼ初見みたいなもの、という謎立ち位置でのレビューになります)

吉本ばなな作品を読むと、人のいのちの生々しさとか、条件が揃うと人智を超えたものに触れられちゃう神秘と危うさみたいなものとか、現実離れして夢みたいな自然と愛のワンシーンとか、そういったものが自分の経験と照らし合わされた結果ワッと涙が出て心のデトックスになる みたいな読書体験をいつもしています。

で、この映画ではその要素の散りばめ方が素晴らしかったなと思っています。
なんですけど、映像になると……存外にホラーというか、BGMや映像や展開が相まって、ぞわ、とする瞬間が多かったのが新鮮な驚きでした。特にBGMは映画館の音響で聴くとまあ不気味な恐ろしさがあって……
でも、じわじわ納得しています。そりゃそうです、生き死にの話を人知を超えた何かとするのだから、畏怖が存在しない訳ないですよね、という納得。でも途中ほんとにびっくりして悲鳴上げそうになったよ(さつきが熱出てベッドで寝てたら突然……のあのシーンのことです)

展開は静かというか、大きく派手でドラマチックな演出というものは無いです。情報量も少ない。でも、語られていない部分で、映像の外で想像して補う部分が広く深いのだけど、それが負担にならない感じがとても良かった。

愛する人を失って、食欲も、自分ひとりとして歩いていく勇気も失ったときに、ドラマチックに振る舞うなんてそんなエネルギーは無い。でも、体の奥には悲しみの激流があって、それを認識できてはじめて、色が宿る感じ。さつきの「おなかすいた」の泣き笑い、とってもよかった。あと、案内人さんが突然いなくなったときに、何も語らないふたりもとってもよかった。

鑑賞後じわじわと沁みてくる良さがありました。映画館で見られて本当によかったです。
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