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スティルウォーターのItottyのレビュー・感想・評価

スティルウォーター(2021年製作の映画)
3.9
留学先で殺人事件の犯人とされた娘を救おうとする父親が主人公で、事件の真相を突き止めようとするサスペンスでした。
何が良かったかというと、主人公がアメリカのスティルウォーターの肉体労働者で、特に何者でもない存在だというところ。警官でも元警官でもない一般人が、言葉も通じない異国の地で娘を救うため奔走するってなったら、こんなふうになっていくのかなーふむふむって、妙に納得しつつ、妙に感情移入しながら追体験できたことが魅力的でした。
だから正直、おっきな映画的な抑揚のあるイベントはないのですが、そういうものがないことがかえって良くて、父親の心の変化をドラマとして楽しめるところもあったし、真相を突き止めていく過程で出会った家族との関係性がどうなるのか、もうこれ以上犯人を追いかけないでって思うハラハラ感もあり、かなりグッと物語に引き込まれました。

変わるものと変わらないもの。
変わらないスティルウォーターから出て、マルセイユで経験した親子との触れ合いを通して、ビルは変わったのでしょうか。
実の娘との触れ合いではなかなか見られなかったけれど、マヤと最後に抱き合ったときに見せたあの表情。あれがビルの変化の象徴なんだと感じました。
ラストがハッピーエンドなのかどうかは見る人によると思いますが、私は彼らの未来が前向きになったと捉えました。

人生は残酷であり、何かを得ようとすれば何かを失う。全てを手に入れるなんてことはできないものです。
そうであるならば、、、主人公のみならず、この物語に登場するすべての人にとって、この物語はきっと前向きな終結だったのだと、思わざるを得ません。
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