岩嵜修平

逆光の岩嵜修平のレビュー・感想・評価

逆光(2021年製作の映画)
3.6
大好きな『ワンダーウォール』組が再集結ということで、ずっと楽しみだった作品。渡辺あや脚本の新境地(『カーネーション』が近いかも)であり、堂々たる須藤蓮初監督作。尾道を舞台に交わされる若者たちの秘めた熱い眼差し。1970年代を描いた文芸邦画を撮る新鋭が出てきたことだけで嬉しい。

この時代を描いた邦画を観たのは矢崎仁司監督作以来。設定(避暑地の海も)から『君の名前で僕を呼んで』を思い浮かべずには居られないが、三島由紀夫作品の影響も大きいのだろうか。空虚な政治議論に花を咲かせる若者達に向ける、学生運動に乗り遅れた世代ならではの、憧れつつも冷めた目線も印象的。

同じく『ワンダーウォール』組の大友 良英の音楽もよかった。この手の映画を懐古的に上の世代が撮るより、当時をリアルタイムに知らない若い世代が、現代的な解釈を交えて描くことの方が、今の時代に撮るには価値があると思うので、いずれはガッツリ全共闘周辺を描いた映画を撮って欲しい。
岩嵜修平

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