はなふさよめこ

ダンス・オブ・41のはなふさよめこのレビュー・感想・評価

ダンス・オブ・41(2020年製作の映画)
3.9
映像が素晴らしく、建築や衣装や調度品にうっとり、ゲイの乱交場面等「パフューム」のエンディングを彷彿とさせ刺激的だが「耽美なゲイ映画」という括りから溢れ、妻の孤独も徹底して描かれるフェアネスがあり、その部分では夫婦倦怠モノとも言える。(倦怠というよりは最初から関係などなかったが)ラスト15分のアゲ方とエンディングに戦慄。
ミステリー演出も上手く、夫婦と恋人における「見る」「見られる」の対比と尾行という視線の存在やそれにまつわる閉塞感、シューベルトのセレナーデが印象的に使われるなど音の使い方も良く、曲の盛り上がりに物語を乘せて行くのが上手い。
ゲイのロマンスとして耽溺させてくれながらも、「野心から大統領の娘と結婚した嘘つきのずるい男」「傷つけられた女の尊厳」という視点から逃げず、妻が泣き寝入りをやめる方向転換によって、その視点がラストで結実する。木に登ってライフルを撃つアマダの般若のような素晴らしさよ。繰り返し不協和音を奏でるシューベルトのセレナーデは恋人を乞う歌詞を持ち、最後まで滑らかに恋心を囀ることはできないまま終わる。
主人公イグナシオの名前の由来は「火」、妻の名前は「愛される子」という意味を持つアマダ。彼女がコルセットを纏っている時、それがどこで、どんな状況なのかも注目してほしい。
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