みかん

ナショナル・シアター・ライブ「ロミオとジュリエット」のみかんのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ロミジュリ本当に好きで原版・翻訳版読み漁って、レオ版ロミジュリも見たけど
実はイギリス本国のロミジュリ実写化は初鑑賞👏

舞台裏から始まる演技に映る無機質な壁、骨組み、梯子と俳優の流れるような動きは「舞台」そのもの。
でも音楽の入れ方やカット構成、無機質な舞台裏と意匠に凝った舞台上の対比、17日間をかけて撮影・編集されたという点で今作はやっぱり「映画」なんだと。

舞台セットと小道具は「古典」にかなってる。
家の内装やジュリエットのベッドは名門一家の名残がある上、人を殺める際にナイフを用いていた所がシェイクスピアの時代に対応してる。

セリフや衣装、パーティーでの音楽は「現代」的。この現代はもはやレオ版以上に現代的で2010/20年代の若者を描いてる感覚。
マキューシオとヴェンヴォーリオの同性愛を描いていたのもかなり現代的かな。

舞台と映画、古典と現代のいいとこどり🎞
The Times的を得てる。
なぜここまで相反する事物を全部取り込んでも尚調和して見えるのだろう…不思議でしかない。
これはやはりどこをとってもNational Theatreにしか成せない技だよね…
でもやっぱり生で舞台として見たい。

加えて映画らしいCGやビジュアルエフェクト使ってないのにとてつもなく幻想的だった…🎆
・月に愛を誓うシーン
・教会にて2人だけの結婚式を挙げるシーン
・ジュリエット仮死状態のキャピュレット家霊廟
特にこの3つが舞台らしさもありつつ、ボタニカルな雰囲気…見ていて恍惚としてしまう
ものすごく好きな世界観だった

比較対象がレオ版になってしまうのだけど、
レオ版は俳優が有名故に皆が憧れの目で見る等身大の青年で、
世界観からセットまで豪華絢爛で派手、ロミジュリの恋はピュアな初恋で凄く「アメリカ的」。

でも今作は原作者の生誕地で、かつシェイクスピア悲劇を深く理解しているイギリスのイギリス人によるロミジュリだから、
ロミオが女にだらしなくて客観的になるし、
心にくるシェイクスピア悲劇の重さがあり、
イギリスお得意の官能表現もあり(イギリス好きの方気分害されたらごめんなさい🙇‍♀️)
人生の不条理を全力で体現した「イギリス版」だった。

私はどちらも好きだけど、シェイクスピア本人が実写化を望むのであればおそらく今作みたいな描き方を好んだのかな…と思う

「恋が盲目と言うのなら、なおさら夜の方が良い」
このセリフを恋に関して無知なジュリエットに言わせる時点でもうイギリス節全開だよ
みかん

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