akrutm

Watchtower(英題)のakrutmのレビュー・感想・評価

Watchtower(英題)(2012年製作の映画)
4.7
トルコの黒海沿いの地方トシャを舞台に、監視塔に住み込みで火災の監視を行う男性と、バスガイドのアルバイトをしている女子学生が紡ぐ物語を、静かさが際立つような審美的な映像で描いた、ペリン・エスマー監督のドラマ映画。本作まではドキュメンタリー映画を主に撮っていたエスマー監督が初めて撮った純粋なフィクションである。

心に傷を負い社会との関係を絶つように生きているという似た境遇の男女が、偶然の出来事を通じて出会い、いっしょに暮らしていく様子が、淡々と描かれていく。映画の主な舞台となる、誰もいない山岳地帯の小高い丘の上にある監視塔には、前半は男性だけ、後半は男女二人しかいないというシチュエーションそのものが二人の心情をそのまま表現していると言えるが、それらを映し出している映像も、詩的とも言える美しさである。次作の『Something Useful』ではこれらの特徴がより印象的に表出されることになるが、本作もなかなかの秀作である。

また、はっきりとした結末を提示せず、見る側に解釈を委ねたままに終わるというスタイルも、次作と同様である。それでも『Something Useful』では余韻が残る程度のラストシーンがあったが、本作では、停電でいきなりテレビの電源が切れたような唐突な終わり方になっている。ここまでの潔さは個人的には好きであるが、批判の対象にもなったようである。普通に考えると、二人は一緒になることが暗示されていると思う一方で、深刻なトラウマがそうさせないようにも見える。いずれにせよ、深く印象に残る作品である。ペリン・エスマー、もっと見てみたい。

バスガイドをしている女性を演じたニライ・エルドンメズがなかなかの美人である。でも、美人でありながら、陣痛に苦しむ姿などかなり激しい演技も見せている。実際に彼女が妊娠しているときに撮影したと思うお腹も映る。生まれたてのまだちっちゃい赤ん坊も出てくるが、彼女の子供なのかもしれない。
akrutm

akrutm