ごんす

前科者のごんすのレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
3.9
罪を犯した者の更生に寄り添う国家公務員、保護司の阿川佳代と過去に殺人を犯した罪で保護観察中の工藤を中心に彼らを取り巻く物語。

この作品を観るまで保護司の仕事は無報酬であることを知らずに驚いた。
もし少しでもこの映画気になった人はアマプラ君で1話30分、6話で完結のドラマ版が配信されているのでそちらを観ておくと更に良いと思われます。
このドラマ版がサクッと観れるのに凄く面白くおすすめ。

今回の映画はドラマの3年後の設定。
直接話の繋がりはないものの主要登場人物は映画にも登場。

有村架純演じる主人公の佳代はコンビニのアルバイトをしながら無報酬である保護司の仕事をしている。
今、有村架純ぐらいの世代と知名度でこんな役に実在感が出せる人いるのだろうか。
腐るほどCMも出てて、とても可愛いらしいのに、作品の中では有村架純を感じさせない。
「花束みたいな恋をした」の絹ちゃんなんかはその代表だと思うけれど、今回の「前科者」の佳代も新たな代表作になっている。

そこに「ヒメアノ~ル」で連続殺人犯として強烈な印象を残した森田剛が保護観察中の元殺人犯、工藤として登場するのだからこれはもうキャスティングの時点で勝ってる気が。
多分、この映画の好き嫌い関係なく森田剛も有村架純も絶賛されるはず。
演出も素晴らしいけど、お弁当食べてるシーンだけでグッとくる。

その他にも若葉竜也やリリー・フランキー、石橋静可など最強メンバー(小学生の語彙力)が脇を固めるのですが、皆見せ場があり泣かされてしまったり。

まず今の日本社会に蔓延る一度失敗した人間が再出発できなくなる雰囲気が関係していると思うけれど、取り返しのつかないことが起きて負の連鎖が起きる映画が近年邦画で多い気がする。

この「前科者」は更生という一人の人間の再出発の部分に焦点を当て、なぜ罪を犯してしまうのかも考えさせられる非常に繊細な話なので、やはりリアリティに欠ける所があると直接テーマに関係ない所でも凄く引っ掛かる。
この映画では警察そんなに馬鹿なの?と思うシーンが何ヵ所かあり結構ノイズに感じた。
それまで没入して泣いたりしてたので何やってんのと勿体無かった。
ただ、この更生や寄り添ってくれる人の存在というテーマは間違いなく映画に向いていると思うし、観て本当に良かった。

余談だがヒメアノ~ルの森田は幻聴に悩まされ自分でこめかみを叩いていたが今回は補聴器をしていたり奇しくも耳に何かある共通点。

監督も違うし、演者が同じだけなのですが
悪意ある声の幻聴と補聴器を外した時のピーという音がそれぞれ我を忘れそうな時に発動していた様に感じる。
もしヒメアノ~ルの森田にこの映画の佳代のような存在がいたら…なんて思ったりもした。
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