蛇らい

前科者の蛇らいのレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
3.4
牛丼を作り対象者を迎え入れるというお決まりのパターンから、対象者が取るアクションによってキャラクターを描き分けるという細やかさが好印象だ。お腹いっぱいであろうと、何も言わずにいただく描写はセリフがなくとも雄弁であった。

保護司という公的な機関でありながら、個々人の裁量に任される部分が大きい業務であることの危うさとも向き合ってきたテレビドラマシリーズと比較すると、盤石な警察という組織が絡みすぎて、保護司として、一人間として対象者とどう向き合うのかという視点が軽薄になっていた。ジャンルとしては刑事モノに強く寄りすぎて主題がぼやける。

キャスティング面でも、ドラマが起こるキャラクターには名の知れた役者が起用され、このキャラクターに何かが起こるのだろうなという先読みをさせてしまう。

奇しくも『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』と同じく、世間から疎外されてきた人へのセカンドチャンスの意義を問いてはいるが、上記作品で描かれた善意の過信が招く可能性を啓示できなかったのは惜しい。

やはりテレビドラマシリーズでは、保護司という役職が孕む、個人に託された厚意の裁量の危険性と、業務として取り組んだときの割り切れなさと限界が描かれていて、気持ちの歯切れの悪さも秀逸な作品だったと思う。
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