KnightsofOdessa

AWAKE アウェイクのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

AWAKE アウェイク(2021年製作の映画)
3.0
[全部"不眠で頭がおかしくなってるんです"で片付けられるの天才では?] 60点

最近は偶然か必然か疫病蔓延系の映画をよく見かける気がするが、それはコロナ禍の恐怖を全世界的に共有したことで、どうしてそうなったかという余計なことを考えなくても恐怖が伝搬することを知ってしまったからのようにも思える。本作品でもご多分に漏れず、全世界の人がいきなり不眠症に陥り、発狂までの時間で対応しようと躍起になる。しかも、都合よく電気も同時に失われたので電話も出来ない。本作品の面白いポイントは、全員が不眠になって発狂することで、ご都合主義や短絡的な発想が起こりうることとして許容されることだろう。解決策を探る研究者やそれを守る軍人も含めて全員がヒャッハー状態なので、どれだけ馬鹿みたいな展開だろうとそれっぽいのだ。更に興味深いのが、主人公は廃棄医薬品を横流しして小遣い稼ぎしてた元軍人なんだが、その後の物語の中で不眠が進んで発狂しているのか元からヤバい奴なのかが結構グレーになっているということだろう。それもそのはず、彼女が途中で出会う人々は非常に冷静(息子、黒人の囚人)か見た目どおり(車を奪ったチンピラ、脱走した白人囚人)の人しかいないせいで、作中世界のデフォルトが何処にあるか分からなくなってしまうのだ。それでも、許容された発狂展開が面白すぎる。なにせ"お婆ちゃんは走れないから"といって普通に死地に置き去りにしたり、旧型車を持っている知り合いが死ぬのを特に驚きもせず横で見てたり(言い方に語弊はあるが間違ってはない)、深夜の森とかに子供を放置したり、目の届かない場所で娘を寝かせたり、やりたい放題!妙な切迫感のなさも、観客を発狂状態へと巻き込んでいるようで普通に面白い試みだと思った。もうちょっと捻りがあったらベスト行ってた気がする。
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