あさ

ディア・エヴァン・ハンセンのあさのレビュー・感想・評価

3.3
Rotten Tomatoesの評価がよろしくなかったので、絶対自分の目で確かめなければいけないと謎の使命を感じていた。長いよ。

コロナ直前にロンドンで観劇したの。2017年のTony賞のパフォーマンスで"Waving Through The Window"があって、こんなに気持ちがダイレクトに来る歌ある?ってくらい自然と涙が溢れたの。今思うと数年前になってしまうけれど、SNSで人と繋がれる時代なのに、タップしてもタップしても誰も手を振りかえしてはくれない。誰も森で倒れている自分を見つけてくれない。思春期、学校という限定されたコミュニティ(から脱却できるはずのSNSもあるのに)で味わう孤独や不安。帰る家でも愛がない。愛があってもすれ違い、ぶつかってしまう家族の関係。このミュージカルはきっと、何か救う力があるんじゃないかと思って機会があれば絶対見る!と思ってたやつだったの。

そんな映画以外の思い入れもあるけど、ロンドン観劇の時は正直後半につれて釈然としない部分が多くて(自分の理解力にも絶望したけど)、映画化は答え合わせみたいな気持ちで臨んでた。けどしょ〜み同じだったのよ。私が感じたモヤモヤは理解力不足と共に、この作品のプロット自体にあるみたい。

それぞれの登場人物の気持ちが綺麗に歌になっていくのも、それぞれの曲も大好き。ただ本筋として、あくまでもエヴァンの話に終わってしまって肝心のコナーを思うとモヤ、モヤモヤとなる。優しさを偽善と言ってしまうのは心が痛いけれど、本気で誰もコナーを知ろうとはしてない。彼はこんな形で見つけられたかったのかな?と思ってしまう。彼が本当に悩んでいたことに対して誰も深く理解せず、形ばかりの果樹園を建てる。肝心のエヴァンは彼の歌を見つけて勝手にスッキリしてる印象すらある。もっと彼と話せなかったのかとか反省する気持ちもそこまで伝わらなくて(反省しろとは言わないけど)、思い出の美化ばかりになってしまっている気がする。

尺の関係もあろうが、結構楽曲のカットも多い。"Anybody have a Map?"とか"Good For You"かなり好きで聴いてるのに、少なくとも1個目のは無くさないでほしかった…。どちらも母親目線の歌だから、これがないことによってエヴァンとコナーの母たちそれぞれの悩みも削除されてしまう。アダプテーションをオリジナルとイコールで捉えてはいけないのは分かるけど…。代わりにぶち込まれた"Anonymous"もまあ、いい曲だが…。(ケイトリンやアマンドラの歌が上手いのはシンプルに感動した)

それでもこの作品は好き、というか曲がかなり処方箋なので。しかしモヤは否定できない。
あさ

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