たき

ディア・エヴァン・ハンセンのたきのレビュー・感想・評価

4.0
ミュージカルが個人的に苦手なので、ついつい敬遠してたのですが、ツカミからテーマからドストライクでないわけもなく。最近とみにアマプラが激しくオススメしてくるので観てみました。

冒頭10分で涙腺決壊するわけですが。

だめなやつです。それはもうはっきりしてはいるんですけどね。
けどたとえそれが嘘だとわかっていても、それって、誰もがのどから手が出るほど欲しいものですもん。
孤独ほど、この世でつらいことなんてないわけですし。

しょせんひとは世界を主観でしか認識できないのだから、事実はどうあれ、この世のすべてのひとが本当だと信じることができたのなら、それはつまりもう真実でいいんじゃないかと思っちゃいたいですよね。
けど、嘘はあくまで嘘。
どんなに巧妙にだませても、この世でたったひとり、どうしてもだませないひとがいるのですよね。
だからどっちにころんだって、いい結末なんて待ってないんですよね。

エンディングにもなってる、コナーへの追悼という名を借りた魂の叫び。それを体現するかの如き母の愛。欲しいものぜんぶはあげられない、足りないものもあるかもしれないけれど、ずっとそばにいる。歌詞も完璧でした。
ひと昔前ならそうはいっても俺にはそんなひといるわけな(検閲)とか言ってやさぐれてたと思います。あやまれ昔の俺。

カミングアウト後の、なんとか嘘を本当に近づけようと奮闘するエヴァンの姿がまたいじらしい。
そもそもの発端となる嘘も、遺族を慮っての彼のやさしさからきたものなわけですし。
それさえあれば、いつか嘘なんかつかなくたって、本当のそれを手に入れられると思うのです。

ミュージカルはやっぱり苦手ではあるんですが、すぐに気にならなくなってました。
歌詞がストレートですし、なにより曲がいい。全曲泣けるとはまったくの想定外でした。
たき

たき