るるびっち

ディア・エヴァン・ハンセンのるるびっちのレビュー・感想・評価

4.1
善人が他人を騙すパターンは、
①人が良すぎてNOと言えず、結果的に人を騙す。
②そそのかす悪人が背後にいて、言いなりになり騙す。
が、多いと思う。

本作が秀逸なのは、当事者が既に死んでいることだ。
嘘や騙しがあっても、相手がいれば反省して人間関係は築ける。
しかし相手が死んでいると救いがない。
死人を利用した感じにもなり最悪だ。

相手が死んでいる救いのなさが、現代の孤独の深さをえぐっている。
昔のドラマと違い、詫びて済む範囲ではないので厳しい。
そこまで救いのない設定をよくしたなというのと、そこから誤解と嘘で話を広げる手腕が見事。

主人公を見ている内に、死んだ彼も同じ孤独で苦しんでいたのだろうと察することが出来る。
内気な主人公と対照的にイジメっ子で嫌な奴なのだが、抱えてる孤独は同じなのだろう。
イジメっ子側を回想などで、ヘタに描かなかったのが良かった。

ネットで他人と広く繋がれるようになった分、本当の理解者を得ることは難しくなったのではないか。
同じ孤独を抱えていながら、相手を拒否する。
主人公は生きている時には築けなかった共感を、相手が死んだことで安心して築けるようになった。
孤独同士が、実は死なないと繋がれない。
絶望的に孤独じゃないか。
るるびっち

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