叡福寺清子

渇きと偽りの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

渇きと偽り(2020年製作の映画)
3.6
ジェイン・ハーパー原作小説を映画化した本作.The Dryというオリジナルタイトルを「渇きと偽り」と邦題化した早川関係者,ならびにそれをそのまま用いた配給会社関係者に称賛を贈りたいです.こんばんわ三遊亭呼延灼です.

1年以上も続く日照りで土地が渇ききったオーストラリアはビクトリア州のある街.かつて,とある理由で街を後にした連邦捜査官アーロン・フォークさんは,高校時代の親友ルークが嫁と息子を道連れに無理心中したとの訃報を受け,20年ぶりに街に戻ります.葬儀に参列するだけでメルボルンに戻る予定でしたが,ルークさんの御両親から『息子が心中するわけがない.経営してる農場の帳簿だけでもいいから調べてほしい』と懇願され,やむなく捜査することに・・・

作品はルークさん死亡に対する捜査と,アーロンさん達の高校時代の過去を往復します.キーワードになるのは勿論『嘘』.渇望される水の代わりに,嘘が人の心に染み渡ります.それどころか劇中の台詞にあるように,嘘をつき続けた結果,心にこびりつき第二の天性になっていました.それでもつき続けなければならない嘘とは・・・
その一方で捜査は進み暴かれる嘘.嘘を付き続けた男が嘘を暴く.渇いた大地に人の心も渇きますが,人が憩いを求め集まるバーのマスターが一番いい人というのも,また何かの暗喩だったりするのでしょうか.
なお,アーロンさん主役小説「潤みと翳り」も映画化が決定しておりまして,こちらには,お久しぶりなアナ・トーヴさんが出演される模様.日本でも公開してもらいたいですが,387席のスクリーンに客3人じゃあ厳しいかもなぁ・・・ってなんでこんなでっかいスクリーンでやるの(嬉しいけど).