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裁かるゝジャンヌのakubiのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
5.0
この15世紀の彼方から、ひとは変わりようもなく、ひとを裁くための理由を探しているよう。なにかのせいにして誰かのせいにして。あの審問での男たちの嘲笑。彼女の大粒の涙。信じるものが変わっても、魂を殺して生きながらえるものたちは、溺れそうになりながらこの世界になんとかたっている。
殺した自分の魂の欠片のように散りゆくかみ(髪)を見つけたときのジャンヌ。火あぶりと聞いたときのジャネットの恐れと嫌悪。焼かれゆく聖女をつつむ煙のなかで涙した輩もいたのだと、今のわたしたちは知らされる。
処刑のさなかに準備される武器と兵士たち。"聖女を焼くんだ" ということを承知であったというぞっとするあのシーンが、堪えたけれどなんだか爽快だ。それもまたエンドロールのメッセージを彩るようだったから。
うるさい怒りも憎しみも聞きたくない。ただ深いふかい哀しみが、聴こえた。
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