こうみ大夫

裁かるゝジャンヌのこうみ大夫のレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
3.7
宗教映画祭にて。正直、難解というよりシンプルすぎてびっくりした。だってずっと顔芸。クロースアップ、クロースアップ…。強引な撮影には慣れなかったものの、黄金比的なおいしい構図をワザと外す撮り方、何かの視点であるかのようなキャメラのレベル等、やはりドライヤーは撮り方を工夫しているなと感じた。
最後の焼かれるジャンヌは凄い。どうやって撮ったんだ??
後日考えてみたが、この映画は「ジャンヌ・ダルク可哀想だね」という素直なメッセージを伝えている訳じゃないと思う。むしろこの映画が見せているのは、死の恐れに負けるジャンヌ・ダルク、そしてそれによって「裁かるる」ジャンヌの姿なのだ。人は誰も死を免れ得ない。しかし信仰は精神において、死に打ち克つ。そんな力を持っている。人は死の恐怖を乗り越え、神の苦しみに与る。それがジャンヌの信仰であったはずだった。だがジャンヌは死を恐れた。判官の影で隠され、彼女が見えなくなった十字架は、隠されたものではない。見えなくなったのだ。見失ったジャンヌの前に広がる光景、揺れる処刑道具、落ちてくる棍棒、等々。それらは死の恐れの象徴だ。
まだまだ考えきれないが、この作品が「聖なる」ジャンヌ・ダルクより、「人間」としてのジャンヌ・ダルクを描いているという点は非常に興味深い。
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