やっぱ水橋研二の声が良い。新海誠もこの映画をみて『秒速』の出演を頼んだとか。
図らずも隠されていた自身のサディスティックな性癖に気付く瞬間のつぐみの表情が素晴らしい。ストレートに性癖をぶつけた原作に比べて、渇いた雰囲気のこの映画に昔はそこまで乗りきれてなかったのだけど、今回改めて見てみていやいや傑作だなと思い直した。原作のエッセンスがコンパクトにまとめられ、それに実写化することも考えた上でよりリアリティを持たせたとても良くできたストーリー構成だと思う。ドライに一線を引いているおかげで一部の変態が喜ぶだけの自己満足に陥らず、きちんと青春映画として仕上げたことに意義を感じる。この後にメジャー映画を手がけていくことになるけど変な感じにならないし、塩田監督が相当な手練れであることがよくわかるデビュー作。
2022年16本目