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ONODA 一万夜を越えてのRENのレビュー・感想・評価

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
4.2
第二次世界大戦最後の兵士、小野田を軸とした物語。彼自身が終戦を迎えるまで彼が何を見てどう生きたかが紡がれる。
長い間戦争に捕われることを強いられた要因は、終わりが見えなかったことにある。
普通の兵士なら玉砕か投降か解任を選ぶ(もしくは強いられる)。しかし小野田はその立場故に投降は勿論自決も許されない状態に陥る。終戦を知らされることが無ければ彼の終わりは戦勝か戦死かの2択になってしまう。約30年に渡る任務の中でも「いっそ自決して楽になった方がいいのではないか」という思考すら起こらなかったのだろう。
世界が終戦と言ったとしても、彼の戦争は終わることなく続いていた。肥大化した使命感でビジョンを見失い、しかし勝利を信じ時間だけが無情に過ぎた。大日本帝国がかけた呪縛に捕われても小野田は戦い続けたのだ。
なんてやるせない人生だろうか。しかしこれを不憫の一言で同情を寄せて片付けるには余りにも軽薄だ。それは彼なりの愛国心を否定してしまう気がしてならないからだ。
未達の任務と生還を秤に掛けたとしてもこれが彼にとっての敗北なのか勝利なのかは、少なくともこの作品から我々が判断するのは不可能だろう。
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