いずぼぺ

ONODA 一万夜を越えてのいずぼぺのレビュー・感想・評価

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
3.7
ある視点

まさに「ある視点」だと感じた。この小野田少尉の話はリアルタイムで知らず、親の話で知っていた程度だった。日本人ですらこの程度なのに、これをなぜフランス人の監督が撮ろうと思ったのかしら?
結果としてだけど、ちょっと長尺なのを除けば興味深い作品だった。
日本人が制作していたらこんなに否定も肯定もしない、美化もキワモノ扱いもしない作品にはならなかったかもしれない。

陸軍中野学校二股分校で徹底的に秘密作戦工作員として教育を受けた小野田少尉。
「貴様らに死ぬ権利はない」と玉砕を禁じられての前線入り。しかも1944年のフィリピン、ルバング島。劣勢も劣勢。そして、敗戦。ここから小野田少尉の壮大な陰謀説、隠密作戦が始まる。
途中、元部下の赤津氏が呼びかけにきても信じない。父、兄が来ても信じない。
ゲリラ戦を戦い抜くには非常に優秀な兵士だと思うが、敗戦の知らせも信じず戦後政府を傀儡国家と呼び、新たな世界勢力図を考えていたあたり、中野学校の教育の賜物か生来認知が歪みぎみだったのか相棒の小塚さんが亡くなってもひとりジャングルで隠密行動をおこなっていた。これってすごいことだよ。

とまあ、こんな壮絶な話を割と淡々と描いたことは素晴らしい。是でもなく否でもなく。
「ある視点」の物語でした。

余談だが、小野田少尉の故郷和歌山県海南市には時々遊びに行く。現地の友人に話をすると、ご実家の集落を教えてくれた。
まだ戦後は続いてるんだなーと妙に実感した。
96