つかだめぐみ

梅切らぬバカのつかだめぐみのレビュー・感想・評価

梅切らぬバカ(2021年製作の映画)
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完璧じゃないけど、楽しそうなおもちゃのピアノの音。
太陽に照らされてキラキラ光る薄緑色の梅の実が、風に揺らされてケラケラと笑っているような軽やかで気取らなくて自由でかわいい音色たち。この映画にピッタリすぎて、そのアイディアが好きだと思ったし、何だかおもちゃのピアノが欲しくなってしまった。
ホンモノのピアノやピアノ以外の音を使う場面もあって、その変化のつけ方も作り手の優しさが滲んでいた。その全ての音楽が障がい者さんたち、その家族や補助する人たちへの愛のある応援歌なのだと感じて、ニコニコしてしまった。

カメラの構図がどこかドキュメンタリーチックなところがあって、この物語をただのフィクションとして描きたくなかったスタッフたちの祈りや願いが、ちゃんと絵になっていて、どこを切り取ってもスタッフや演者の優しさや強さを感じることができた。

加賀さんもつかっちゃんも、ホントにどこかにいるんじゃないかと信じたくなるくらい、ホントの家族みたいな暖かな演技をしていて、まるで自分がこの家の馬のぬいぐるみになって2人をずっと見届けてきたような愛着を感じてしまった。
「存在が犯罪」だとか障がい者さんたちが言われてしまうしょーもないこの世界だけど、ほんとはみんな優しいのだと、この世界はもっと優しくなれるのだと信じたくなる、すごくすっぱいけど美味しくて栄養のある梅干しみたいな映画だった。