otomisan

梅切らぬバカのotomisanのレビュー・感想・評価

梅切らぬバカ(2021年製作の映画)
3.7
 「梅切らぬバカ」に先立つのが「桜切るバカ」梅は切らなくても当の梅はへっちゃらだが、桜は切れば菌に侵されやすく芳しくない。で、こちらはどんな「桜」を切ってしまう、それとも切ってしまったんだろう。切られた「桜」に切られる「桜」それが何なのか見えない辺りにそれを描きたくても描き切れないと思った監督の欲求不満を想像してしまう。

 梅が勝手な枝振りでいるのが栽培者の「バカ」の証しなら、「桜」が切られるのは誰のどんな「バカ」の証しだろう。
 それが語られる前に話が終わってしまうようだ。それは、ポニー事件や騒音事件がグループホームの追い出し騒ぎにまで事が広がりながら解決に手つかずのままであることから感じるのだが、話をどう進めてどこに落としどころを探ろうと、監督は欲求不満を打ち消せない気がする。

 円満解決を望んでも、入所者の予期せぬ行動や騒音に寛容であるには周囲の人たちの気持ちの変化を促すため誰の何が必要なのか、忠さんがポニーの敵でない事をどう明かせるのか、不法侵入やポニー誘拐の悪意の無さを彼らはどう理解してもらうのか。
 監督は劇的に難しい問題を拵えて後悔している?そして、その解決の決めつけ難さにあえてしっぽを切ってしまった?
 そこで、敢えて、梅にはもちろん梅の勝手にさせ、「桜」も「桜」の勝手にさせて皆元の通り。ただ、ひとつだけ、はじまりには和合しそうもなかった、梅の木の奥の2軒だけが分かり合ってるささやかな世界を見せて、さあ、ここからどんなことが始まるでしょうと、行方を占ってごらんと、映画が短い分ご考察を宜しくと差し出したようである。
otomisan

otomisan