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ギャング・オブ・アメリカのIDEAお休み中のレビュー・感想・評価

ギャング・オブ・アメリカ(2021年製作の映画)
3.4
アメリカの闇を支配した大ギャング、
マイヤー・ランスキー。
彼の自伝出版で再起を狙う記者の取材に、語られる壮絶な人生とは---。




注)以下、作品の内容に触れます。




ギャングと聞けばやはり反社会的なイメージが拭えませんが、ランスキーは果たして純粋な悪だったのでしょうか?

例えば、ナチスドイツの隆盛時にはアメリカ国内の親ナチス組織を潰したり、イスラエルの建国に際し武器を供与するなど、ユダヤの血を引くものとしてユダヤ人の権利保護に尽力したと言えます。
(イスラエルとパレスチナの間の問題を考えるとなんとも言えないかもしれませんが…)

さらに、過疎地域だったラスベガスを見事な手腕でギャンブルの聖地へと変え、数多の雇用を創出。アメリカ経済に多大な貢献をしたのだとか。

一概に「悪」で括れない、男の生き様がそこにあります。

また、彼の人間性もしっかり描かれており、息子に語りかける姿はただの父親でもあるのです。
法を侵し金儲けをする仕事の顔とはまた違った面が見え隠れします。
そんな彼の心の動きにご注目ください。


観終えてみると、今作のテーマは「人生において何が一番大切なのか」にあると感じます。
人生を支配〈コントロール〉することを重視していた彼ですが、人生を完全に支配するのは無理なこと。
さまざまな経験を通して辿り着く、本当に大切なもの…。

「この世は白と黒ではなくグレーの濃淡で出来ている」

ラスト、どこか寂しげなランスキーの背中に何を感じるのか。

派手な作品ではありませんが、自らの人生を見つめ直す機会にもなりうる気づきを与えてくれる作品でした。
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