岩嵜修平

グレート・インディアン・キッチンの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

3.7
特に男性必見のフェミニズム・インド映画。記録映画的に手際の良い編集で、家庭内での日常を繰り返し見せられることで際立つ、男尊女卑の異常な風習。妻と母が汗をかきながら凄いスピードで家事をこなす横で、男たちが何をしているか。何度も殴りたくなる男ども。

タイトルが見事で、出されるインド料理の数々は、好きで様々なインド料理店に通ってる身としても新鮮で魅力的。ながら、そうした料理を誰が作るか。ヒンディー原理主義とも言える人々が守ろうとする時代錯誤な"伝統"と"宗教"。憲法解釈やSNSにおける発信など、2020年以降のインドとの衝突も描かれる。

インド映画ながら、日本も世界も全く他人事ではなく。伝統ある家系の男の不自由さも描いた点では『あのこは貴族』と、裕福な家庭に縛られる女性を描いた点では『Swallow』と、構造としての男尊女卑を内包した旧態依然とした宗教の異常性を糾弾する点では『ペトルーニャに祝福を』と同時代性を感じた。

いわゆるインド映画を期待すると、始まって数分間のエンドロールならぬオープニングロールに呆然とし、始まってすぐにダンスシーンが有りながらも、その後はBGMも無くひたすら繰り返す日常と凡ゆる切り口からの女性蔑視が描かれるのでキツイですが、最後には耐えたからこその展開もあるので最後まで。
岩嵜修平

岩嵜修平