Elijah

すべてうまくいきますようにのElijahのレビュー・感想・評価

4.5
2023年映画鑑賞の幕開けは、もはや世界で一番好きな監督となったフランソワ・オゾン作品で。
今年は劇場/家でどれだけ鑑賞出来るか判らないので、1本1本を大切に観ていきたい。
尊厳死を描く作品はこれまで何度か観てきたけれど、フランスに於ける事情を垣間見られることが出来たように思う。
重くなりがちな題材をユーモアを交えながら描いていくのでどちらかと言えば見やすかった。
自分勝手で辛辣に映る父親だけれど、演じるアンドレ・デュソリエの魅力も相俟ってかどこか憎めないところがあって。
当事者と家族、それぞれの立場が募る想い。
我が両親に置き換えながら観つつ、いざ自分ならばどう対処するのだろう、とぼんやり考えながら。
印象に残った台詞がある。
父「(尊厳死を選択することができない)お金のない人はどうするのだろう」
娘「自然に死を待つしかない」
父「それは哀れだ」
…この物語の登場人物たちは富裕層クラスだった。
尊厳死を含め高度な医療や治療を受けるには貯蓄が必要だという現実を、この会話が端的に表していた。
観客が尊厳死をどう捉えるかに因って感想が大きく変わる作品でもあるか、と。
フランソワ・オゾン監督の次作は「Peter von Kant」。
セテラ・インターナショナルが日本買付済みなので、今から公開が待ち遠しい。

2023/02/08鑑賞
Elijah

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