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すべてうまくいきますようにのFのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

戦メリのリバイバル上映を観たくてスケジュール調べてたらたまたま見つけた。タイトルに惹かれてあらすじも気になって、友達からフランス映画おすすめされたばかりだし、タイムスケジュール的にはしごできるじゃん!と勢いで鑑賞。

外国の映画って、何が起こってるのか掴めなくて、字幕を追ってると読むのと聞くのでズレが生じたり、あっ今笑うとこだった?とか空気読めなくて…みたいなところが苦手だったけど、テーマがテーマだからなのか、言葉が分からなくてもニュアンスがわかるから自然と気持ちがついていけた。淡々と進んでいく感じ、劇伴も大げさでなく演奏会とか必要なところでしか流れない。

よくある感動介護ものかと思いきや、ミッション遂行のため法と対立するハラハラ感がメインになった(特に終盤)。自身の人生の終わり、肉親の死というものを飾り立てすぎず、でもきちんと大切にしている距離感・温度感の塩梅がとてもよかった。

やっぱり娘視点で見ちゃうので、お父さんの体調良くなってきて安心してたのに勝手に安楽死するとか決めてしかも調べるように丸投げしてきて、こっちの気も知らずに!って思った。
反面、生きてほしいって思いを押し付けてるのはエゴじゃないかとも感じた。延命と生きることは違う、の言葉が、そうだけどさと思いつつ刺さった。

お父さんが一口食べたサンドイッチ、
①帰ってきて捨てようとしたのを思いとどまって、そのまま冷蔵庫に入れる。
②いくつかシーンを挟んだのち、プラスチックの容器に入れて冷凍庫にしまう。
③そしてまたその後、サンドイッチを捨てる。

この描写が何を表しているか?私は、

①この時のエマニュエルは、お父さんの存在が日常。当たり前。だったのが失われてしまうかもしれないとふと思い、繋ぎ止めようとする。
②本当にいなくなってしまうと思い、意地でも離すもんかと必要以上に守り固める。執着、エゴ。
③父親の安楽死したいという意志に向き合う覚悟。

と受け取った。んーでももっかい見たいなあ。

刻々と迫る別れの日付。
お父さんを乗せた救急車見送るところ泣いちゃったなあ…。飼ってた猫が亡くなって、火葬場で見送った時を思い出して。でも、この映画ではまだ生きてるんだよ。喋れるんだよ。もう少し頑張ればまだ一緒にいられるんだよ。その上で別れるのはさ…
内心、何かトラブルが起きたり急に気が変わって帰ってきてくれないかとも思うよね。頑固親父なのは分かってるけど。そらあ姉妹でしこたま酒飲むよ。こういう時にいいことだって言ってくれるパートナーがいるの救われるな…
ラスト、電話がきて、最初のお薬も2番目の薬も順調に飲み、大好きなブラームスのピアノソナタを聴きながら安らかな眠りについたと聞く。なんだって?と妹に聞かれ、「すべてうまくいった」と答え、エンドロールに。
この流れが美しすぎたな…。とっても静かにエンドロールが始まるのよ。ちょうどよかった。感動を煽るような感傷的な歌じゃなく。あれはブラームスのピアノソナタなのかな…

涙活映画としても観れるけど、自分ならどうするか、死は人権のうちに入るのかを考えさせられる話でもあった。
そんでもって100ワニが流行った頃にも考えたけど、いつ死ぬか分かってるか知らないか、どっちが幸せか。をまた考えてる。

タイトル、原題では「すべてうまくいった」っていう意味で、その方が伏線回収としては綺麗な収まり方だけど、日本語版の方が祈り・お父さんを想う心が感じられて好きだな
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