アラシサン弐

英雄の証明のアラシサン弐のレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
4.0
現代社会における「英雄」の定義って何だろうかと考えてしまうな。

ネットでバズった良い話で有名人になった人が何かしらの不祥事で炎上して吊るし上げられる。
こういうある種「使い捨ての英雄」にされる人が現代にはウジャウジャと生まれては燃えているけれど、この作品はそういうのに関わってしまった人間の見栄とか承認欲求とか嫌な部分をこれでもかと浴びせてくる。

アスガーファルハディ監督の善と悪を不明瞭にする心理ドラマに、メディアやSNSの攻撃性を投入するとより追い詰め方に容赦がなくなってキツイ。
最後の方の主人公とか見てられないくらいやられてたからね。

あと、そんな主人公もあんまり「正しい」人間ではないというか、道徳心はあるのに変なところで名誉に拘っていたりとか、やめときゃいいのに変なウソついて誤魔化してそれが後に取り返しのつかないトラブルに発展したりとか、物語が進むと「あぁ、こういう人なのね‥」となってくる。

それに他の人もよく考えると別に悪い事してる訳ではなくて、金貸しも慈善団体も主人公の再就職先の人も、自分たちが困るからこその行動なんだよな。
それがより一層に善悪を曖昧にしてる。

人間の汚さ全開だけどラストには些細だけど希望感じる。
アラシサン弐

アラシサン弐