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英雄の証明のtjrのレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
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「別離」「セールスマン」のアスガー・ファルハディ監督作。
今作でも人間の愚かさを静かに力強く描いている。

タイトルバックに写る“不安定な足場”はそのまま主人公が手にする栄光のメタファー。
主人公は超二枚目俳優ながら、ふとしたときに見せるニヤつきが絶対に好きになれないなと感じさせる上手さ。

日本で言う“不良が子犬を助けただけで良いやつ呼ばわりされるのが腑に落ちない”がそのまま“借金で服役しているやつが拾った金を届け出ただけで英雄呼ばわりされるのは腑に落ちない”として描写されている。
貸主側の意見は100%正しいのに、SNS等で世論が大きな力を持ち、社会的立場が浮き沈みする。

ラストカットは刑務所の出口と入り口(受付窓口)と並べて写した長回し。
案内を待つ主人公と同じ気持ちで出来事を振り返らされる稀有な体験だった。
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