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レッド・ロケットのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

レッド・ロケット(2021年製作の映画)
4.8



感想を一言で言うなら
「どんな感情になったらええねん」
ショーンベーカーは、経済発展や国のケアから見放された人々を描く。前作「フロリダ・プロジェクト」と同じく主人公はセックスワーカー。今作の主人公マイキーは元ポルノ映画の人気俳優で今は無一文の男。この男がクズでダメなペテン師野郎。ロスから地元に帰ってくるや、身勝手で最低な振る舞いを繰り返す。嫌悪感、ハンパない。

その一方で,撮影監督ドリュー・ダニエルズ(過去作「WAVES」「サンダー・ロード」「イット・カムズ・アット・ナイト」「SKIN短編」…)によるシネマティックとしか言いようのない映像は素晴らしく美しい。
製油工場しかないテキサス州テキサスシティの風景を詩的に捉える。ピンクや青、紫の鮮やかな色使いが素晴らしい。まるで傑作ティーン映画の主人公みたいに夕焼けの中、チャリを乗り回す推定30代の主人公。カラッとしていながら情感を湛えているショット。いやどう思ったらええねん。ええ話しみたいに撮らんといて、と。

ITテック系ベンチャーとかアメリカンドリームとかセレブとかSDG'sとかとかとか、アメリカの表の顔とは正反対の、繁栄から見放された寂れた町とそこに生きる人々の描写間違いなくアメリカの現実だな、と。

◆◆以上、短め感想終わり 以下ネタバレあり追記◆◆

・間違いなくサイテーな主人公で嫌悪感を抱くんだけど完全に憎むこともできない。敢えて両義的な、捉えどころのない風にしている。ダメクズなんだけど、その前に子供っぽい。だいの大人がゲーセンで一人、あそこまで楽しめるか?!という。
(あのラストも非現実的だ。あのシーンは「アメリカン・ビューティー」のケビン・スペイシーとクリスティーナ・リッチを彷彿とさせる。あのケビン・スペイシーもサイテーだった。)

不貞行為をはたらいたり、マリファナを売って儲けるなら、まだ許容範囲内だが、あの交通事故の原因を作っておいて、仲良くしてくれた隣人に押し付けた振る舞いには考えこんでしまう。
悪事を働くけど、憎めないバッドガイだ、と割り切ることができない。死人が出なかったのが救いだが、そこは作り手がギリギリのバランスをとったようにも思う。

推定30代(?)のおじさんが17歳の女の子と街でいちゃつき回す様子も、どうも今の自分には受け入れ難かった(しかしこの部分は本作のメインプロットなので目を瞑るしかない)。
前述したとおり、マイキーは精神的に子供なのだ。だから自身の精神年齢と同じ10代の女の子に一目ぼれするのも納得はいくし、あのストロベリーを演じたスザンナ・サンの眩い魅力は説得力がある。監督ショーン・ベーカーがインスタを見てスカウトしたのも頷けるし、魅力を存分に引き出している。
マイキーは自分の良さを知っているし、自分の売り方を知っている、生まれながらのペテン師タイプのよう。実際にストロベリーの事を好きなんだろうけど、いざ「この子をポルノ出演させたら儲かる」と閃いたらもう誘って一緒にLAに行こうとする。本気で夢をようにも見える。


こんな許しがたいマイキーが、懲らしめられようとする終盤を高揚して見た。そしてなぜかウディ・アレンの「マッチポイント」を思い出しtもいた。あの映画の主人公もクズな不貞行為だけでなく人道に反した罪深い男だった。でもまんまと運良く生き延びた。
ではこの映画はどうなんだ、と不思議な興味が湧いてきた。地元のマリファナ売買を取り仕切るメキシコ系(?)の黒人に取り囲まれボコられる?
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