Jun潤

3つの鍵のJun潤のレビュー・感想・評価

3つの鍵(2021年製作の映画)
3.6
2022.09.25

予告を見て気になった作品。
同じアパートに暮らす3組の家族が織りなす、なかなかクセの強そうな群像劇の予感。
長年アパート暮らしの身としては見逃すことはできませんな。

ローマの、とある3階建てのアパートには各階に一組ずつ家族が暮らしていた。
ある日、3階に住むジョバンニとドーラ夫妻の息子アンドレアが飲酒運転をし、陣痛が始まり病院に向かう途中だった2階に住むモニカを避けた先で夫人を轢き、1階に住むルーチョとサラ夫婦の部屋に突っ込んでしまう。
事故の処理のため、ルーチョらは隣のレナート老夫婦に娘のフランチェスカを預ける。
後日、またいつものようにフランチェスカをレナートに預けると、夜ルーチョが帰る頃に部屋からいなくなってしまう。
いつも娘と行く公園にレナートといたものの、レナートの様子がおかしい。
レナートは認知症になりかけていることがわかり、娘には何も無かったのかとルーチョは気が気でなくなる。
ジョバンニ夫婦はアンドレアの進退を案じ、モニカは母と同じ強迫障害が自身も発症しているのではと疑い始めるなど、それぞれの家族に同じアパートの住民には言えない秘密があった。

なるほどこれはこれは、事前の情報収集が足りず、てっきりゆったりと進む群像ドラマを予想していましたが、序盤から急激に展開されていくドラマに圧倒されました。

あくまで舞台を一軒のアパートに設定していたのみで、各家族間にリンクは無いのですが、アパートであることを考えると、このぐらい距離が空いている方がリアリティを感じますね。

原題は『TRE PIANI(3階建て)』ということで、邦題の「鍵」は本来無かったわけですが、個人的には「鍵」というのもまさに“キー”だったなと感じました。
物語は10年前に始まり、5年後ずつストーリーを展開させていましたが、時間が経って鍵が閉まってしまった秘密は、時間が経っても家族の絆という鍵で開くのかなと思います。
淫行に至るまでにありもしない真相を追い続けたルーチョ、ジョルジョの兄との確執に振り回されていただけでなく強迫障害の影に覆われ続けていたモニカ、罪を犯しても反省の意思を見せず家を出て行ったアンドレアの真意と、普通の対人関係では平行線を辿ってもおかしくはない問題の数々が、家族の絆が恒久的な繋がりだからこそ、いつか鍵は開くのだと思いました。
Jun潤

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