しん

ニトラム/NITRAMのしんのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
3.8
私たちはどこまで「寛容」であれるのだろうか、あらなければならないのだろうか。作品が進むにつれて、どこがポイント・オブ・ノーリターン(引き返せなくなる点)だったのかが分からなくなる。結論をぼんやりと知った状態だからこそ、不安と悩みを深め続ける1時間50分だった。

作品は冒頭から不安である。花火の描写の時点で、近隣への迷惑や(自己の)命や安全に対する感覚の欠如に薄気味の悪さを感じるが、それを強く規制すべきとまでは思えないし、規制してはいけないと思う。しかし、それが徐々に変容していく。本作は銃社会への警鐘であると共に、個人にとって(社会にとって)どこで線引きするのかを強く問う作品である。

そして作品のなかには、さまざまな周囲の人々の善意が描かれている。それは共感や教化、管理、贈与など多様な形態をとるが、その結末がこれであったと言われると率直に悲しい。本作における登場人物たちの行為を非難するのは簡単だが、それをさせない構成は見事だった。この絶望感の先を見据え、自分なりの答えを出しにいくのが今後の人生なのかもしれない。
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