アラシサン弐

ニトラム/NITRAMのアラシサン弐のレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.2
暴力を芽生えさせるまでを描いているのに絶対に暴力を肯定しないという気概を感じる。

挫折や喪失が凶行に向かわせる構図はジョーカーやタクシードライバーと同じだけど、この映画は主人公の心理状態が不明瞭な上に、家族をはじめとする周囲の人との生活や関わった出来事をドライで突き放したような達観した描き方をしていて、虐げられてる側に共感する隙間を与えないような感じがする。

「無敵の人」となって暴力を選ぶことを無邪気に「救い」としていないことが、事件を倫理的に繊細に取り扱ってると思ったし、暴力や銃に対しての問題提起に重さがある。
タブーになってる母国でちゃんと評価をされてるのはそういう丁寧さもあるんだろうな。

実際の事件を予習してから鑑賞したのだけれど、凄惨な結末を分かった上で観るニトラム役の演技は緊張感が異様。
アラシサン弐

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