murmur616

ニトラム/NITRAMのmurmur616のネタバレレビュー・内容・結末

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

 同じ世界でこんなにも悲惨なことが起きていると否応なしに突きつけられました。いかに楽しげに見せても、この世の本質は残酷なのではとすら錯覚しそうで気が滅入りました。キツくて何度も休憩を挟みましたし、全てが不穏に見えて疲れました。能天気に人間を貪り食うゾンビ映画を観たくて堪りませんでしたよ。
 サーフボード買いたさに健気に芝刈り機を引きずり歩くマーティンを思い出すと胸が痛いです。
 店を出す夢を語り合うマーティンと父、ヘレンとの束の間の平和など幸せになる糸筋があったのではと考えてしまいます。ヘレンの事故死の原因だし、父の自殺の一因でしょうがただただ不幸にしか生きられないマーティンが辛いです。何か一つでも上手くいっていれば・・・。でも現代の福祉をもってしても防げたかは微妙と思います。
 人との違いを自覚しているのにそれが何なのか分からない・・・と吐露するマーティンが悲痛で見ていられませんでした。乱射事件を起こす前、鏡の自分とキスするのは追い詰められたが故だったのかな。
 実際の事件からは結構脚色されているようですが、フィクションと思っても胸の奥に澱のような不安感が残る映画でした。
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