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ニトラム/NITRAMの42のネタバレレビュー・内容・結末

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ザラザラした壁を触っているような感覚。不安で脈が乱れる。前半は彼の情緒の乱れに、後半は迫りくる結末に心がざわついていた。

彼の母が決定的な出来事をヘレンに話すシーンを考える。かなりモヤモヤするシーン。
多分母親はその出来事から彼に向ける目も、彼に対する態度も考えも変わっていったんだろうなってことがなんとなく分かって、同時にこの物語を考える上での問題もそこに含まれている気がした。

母親は彼のことをほとんど知らない。
話し合いをしようとしないから。話し合える環境を作ろうとしないし、彼のことを極力考えないようにしているように見えた。だから彼に対して理解ができない幼児のような対応をする。

一番悲しかったのはヘレンが亡くなったと知って警察が訪ねてきた時、「僕は眠っていた」と嘘をついたこと。彼は罪を認め、償うこともできない。善悪の判断が自分の頭でできない。
父親とのシーンはもうただただ苦しかった。「どうして、どうして、」と混乱した。

私の中でたまに起こる「爆発」が彼の中では頻繁に起こっていて本当に苦しそうだった。
愛情や適切な治療、成功体験が彼には不十分。でもどうしたらよかったんだろう。
銃を規制したら済む話じゃない。そんなのこの映画の重要な問題にはかすりもしていないのでは?

分かる部分と分からない部分があって、その両方とも苦しかった。彼も間違っているし彼以外も間違っている。
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