しん

パリ13区のしんのレビュー・感想・評価

パリ13区(2021年製作の映画)
3.3
登場人物のライフストーリーが詳細に語られるわけではないのに、なんとなく彼らの深いところに触れた気がするという意味で、不思議な作品だった。

知り合うこと、触れ合うこと、分かり合うことの間にある想像を絶する溝を、不思議な三角関係を用いることで上手く描いていた。見終わったあとでも、「なぜ」と疑問に思うシーンを解消しきれていない感じが心地よかった。

モノクロ作品にしたことで、なんとなく色味のない世界にしたのも成功だと思います。『ベルリン、天使の詩』が代表作ですが、関係の不在を白黒で描くのは、成功するとものすごくインパクトがあります。本作もパリという色のある街をあえて無色で描くことで、印象深いものになっています。

ただ、もう少しパリらしさがあってもよかったかなと思います。一人がボルドー出身、もう一人は香港出身で、しかも高学歴なのにという共通点があるので、だからこそパリ独特の文化や環境からの疎外を描いたもよかったのではないでしょうか。その点、2020年の最高傑作だと思う『レ・ミゼラブル』(現代版)に軍配が上がります。
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