ヒラセシオ

わたしは最悪。のヒラセシオのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
5.0
ちょうどミラン•クンデラの『存在の耐えられない軽さ』を読んでいる途中に見た。
人生に起こる「偶然」という出来事について考えさせられていて、人生そのものが想像の範疇を超えた「偶然」の連続によって構成されているようにも感じる。

この映画のタイトル『The worst person in the world』世界で最も最悪な“性格”は、もしかしたらクンデラにとっては最高の性格なのかもしれない。

主人公ユリヤは、日々日常に降り注ぐ「偶然」に自由に身を任せている。
医学部を出て外科医になったが、偶然、心理学に興味を持ったので医者を辞め。
今度はフォトグラフに興味を持ち。
大好きな恋人がいても、偶然再会した気になる男性を選ぶ。
側から見れば自由気ままでわがままなユリヤの性格は、世界で最も最悪な性格として見なされる。それは社会が、自由気ままにわがままに、偶然に身を投じて生きるユリヤへの嫉妬であり、それを認めることは自己否定に他ならない。
しかし、本当に最悪なのは、ユリヤを認めることができない社会そのものだろう。
この映画は、一回きりの人生なのにわがままに生きることを許さない社会への警鐘だ。
ユリヤの恋人アクセルのように、人間の”ちゃんとしてないところ”をポジティブに捉えられる人が増える社会になってほしい。

ユリヤとアイヴァンの別れ際、もし2人が同時に振り返っていたら、そんな偶然があって躊躇せず飛び込んでいたら、、、
ヒラセシオ

ヒラセシオ