BOB

わたしは最悪。のBOBのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.2
ヨアヒム・トリアー監督の最新作。

"I always worried something would go wrong, but the things that went wrong were never what I worried about."

大傑作。仕事に恋愛に人生を模索するアラサーモラトリアム女性の日常を切り取ったような作品。感情を揺さぶるストーリー、素晴らしい演技、美しい映像に美しいサントラ、程よくユーモアの効いたユニークな作風。この世界の中にずっと没入していたいと思ってしまう程、この作品の虜になった。

『フランシス・ハ』『緑の光線』『美しき結婚』辺りを想起させる作品。

〜 愛してるけど、愛してない。分からないけど、分かってる。明るいけど、悲観的。イエスであり、ノー。わたしは最悪、きみは最高。〜

年齢とそれに伴う諸々の不安や悩みはユリアに近く、物事の考え方は恋人のアクセルに近く、自分の為に作られたのではないかと思うほど共感の嵐だった。ラストに流れる"Waters of march"♪も、子供の頃家で流れていた懐かしい曲だったこともあって、より親近感が湧いた。

ユリアは移り気のある人間で、あらぬ事で心配したり、良い選択をしたり、悪い選択をしたりする。一方で、行動力のある才色兼備な人間でもあった。そんな才能はあるが不完全な彼女に、親近感を覚えたり、憧れたり、自分を投影してみたり、好きになったりした。

主演のレナーテ・レインスヴェの演技が素晴らしい。自然で繊細な表情の演技に惹き込まれた。どことなく顔がダコタ・ジョンソンに似ている気がした。

章立てスタイルは、日常を断片的に切り取って描くのに効果的な手法だった。"時間を止める"というスペクタクルな演出や、コミックアニメーション、ポップミュージックなど、エンタメ性の高い作風だったのも嬉しい誤算だった。

ノスタルジーではなく、死への恐怖が、過去を振り返らせる。

"If I regret one thing, it's that I never managed to make you see how wonderful you are."

"I'm so tired of pretending everything is okay. It sucks being in so much pain. It sucks. Everything sucks. I don't want to be a memory for you. I don't want to be a voice in your head. I want to be happy together."

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