Unrelated

コンパートメントNo.6のUnrelatedのネタバレレビュー・内容・結末

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

モスクワに留学中の大学生ラウラ。大学教授かつ恋人であるイリーナと一緒にペトログリフを見に行くはずが、出発直前で旅をキャンセルされる。「恋人がもう自分に興味ない」ことを感じながら、寝台列車の2等車6号室に移動する。
同じ6号室に乗り合わせたのはリョーハという名前のロシア人男性。リョーハは寝室で酒を飲み、煙草をふかし、ドアを開けラウラを驚かし、ラウラに失礼な言葉を言い放つ。第一印象は最悪。ラウラはそんな彼にうんざりしていた。そんなラウラは停車駅サンクトペテルブルクで折り返し、モスクワに戻ることを決意する。戻ることを伝えるために、イリーナに電話をかけたら、あまり戻ってきてほしくないという態度を取られた。部屋を変えることはできないまま仕方なく乗り合わせているうちにお互いを知り、自然と自分のことについて語っていき…。

ラウラは人間関係での蟠りや不安を抱えながら乗車し、リョーハと会話していくことで自分自身を見つめる目が変わっていく。
キャンセルされたのに一人で乗車しようと考えるのは、自分の居場所がないという孤独を埋めるため?

「寝室列車は過去に目を向ける場所。」
「この旅は自分を取り戻す救済の旅。」

最初ラウラはイリーナのように、インテリで、モスクワ市民のようになりたいと思っていた。イリーナと一緒に旅をして、彼女の思い出の一部になりたいと思っていた。
しかしこの旅で気づいた。実はリョーハと似ているんだって。不謹慎で、不器用で、孤独で…。

リョーハはこの作品でいう「ラウラが避けようとしている自分自身を映し出す鏡」。
この作品は「自分自身の内面に飛び込み、自分は何者であるかを理解し受け入れる過程を描いている作品」だと思われる。
そして友達ごっこをくだらないと感じるリョーハに怒りをぶつけるのではなく、追いかけて抱きしめるところは感動した。

またこの作品の舞台はネットも携帯もない90年代。列車が止まる度に公衆電話で恋人に電話をかけるような時代で、身近な人と連絡がとりづらい。行き先は同じ、部屋を変えることができないこともあってか、長い時間の中、リョーハを受け入れるしか他ない。しかも途中一緒に乗車したフィンランド人男性にカメラを奪われ、現実逃避するためのアイテムが無くなったことにより、一層孤独感が増す。この状況が、他者との会話を踏み出すきっかけとなり、互いの素性を知らない二人が人間関係を築いていくのだ。今だったら一日中スマホを見て他人と話すことはなかったかもしれない。

最後に、ペトログリフを探しているときに、北極圏の海を見つめて、内省するラウラについて、おばあさんの「自分の心の声を信じること」という教えに従っているのではないかと野木京子さんが解釈していてなるほどと思ったし、ペトログリフは写さず、感動しているラウラが歩く映像を写しているところが良かった。「映画で見るべき最も大切なことは、大きなものではなく、人間の心だ。」という監督の思いがあるそうだ。
Unrelated

Unrelated